ホンダディーラー・ホンダ系チューナーでの整備をしていた、国家2級自動車整備士のミズコが
中古のフィットを検討している人に向けて
・初代フィットの弱点
・中古フィットを検討する上での注意
これらを解説します!
結論として、中古車で購入するなら2代目フィット(GE系)がオススメです!
GD系フィットの中古車の弱点
初代フィットの中古車の注意点
初代フィットは、2001年6月に『ロゴ』の後継モデルとして発売されました。
通常、リヤ席下に装着されている燃料タンクを、前席下に移動した『センタータンクレイアウト』を採用しています。
フィット伝統のリヤシートのアレンジが出来る優れたパッケージにより爆発的なヒットをしました。
そんな初代フィットですが、持病とも言える弱点が存在します。
GD系フィットの弱点
- 発進時ジャダー
- 加速時の息つき
- 車体後方からゴロゴロ音
- 車体リヤの雨漏り
- ドアミラーベースの塗装剥がれ
- リヤショックアブソーバの油漏れ
これらが良く見られる症状です。
発進時のCVTの振動
整備の業界では『発進時ジャダー』と呼ばれている症状が出ることがあります。
CVT振動の症状
完全停止の状態から発進した時に、振動が出ることがあります。
速度が上がると症状は消えて、通常走行ができます。
CVT振動の原因
スタートクラッチの当たりが悪いことによって発生します。
スタートクラッチとは、停止状態から発進するために装着されいて、複数のクラッチ板を重ね合わせた構造をしています。
クラッチ板の表面の当たり悪いと、スムーズに動力を伝えられなくなり、振動が発生します。
CVT振動の解消方法
- HMMFを交換
- 当たり付け作業
- HMMFを交換
- 当たり付け作業
HMMF(ホンダマルチマチックフルード)を交換し、当たり付け作業をする。
これを2回繰り返す事により殆どの場合解消することができます。
あまりにも症状が酷く、解消できなかった場合CVT交換になる可能性があります。
解消の費用
CVTオイル交換2回分の費用がかかります。
CVT交換に至る場合高額になります。
当たり付け作業は『ホンダディーラ』で作業できます。
ホンダのサービスマンは当たり付け作業を熟知しています。
症状の可能性のある車
- 1.3LのCVT車
- 1.5LのCVT車
GD系フィットのCVT車で発生可能性があります。
MT車は発生しません。
加速時の息つき
加速時の息つきと呼ばれる症状も発生する事があります。
息つきの症状
一定速度で走っている所から、アクセルを踏み込んだ時に加速がもたつく症状です。
アクセルを踏んで加速するはずのところがもたついたり、減速してしまったりします。
息つきの原因
スパークプラグのトップコイルの不良で発生します。
エンジンは空気とガソリンを燃やしますが、スパークプラグに火花を飛ばしにくくなると発生します。
息つきの解消方法
プラグのトップコイル交換で解消できます。
息つきの起こりやすい車両
- 1.3Lエンジン車
MT車でもCVT車でも発生可能性があります。
1.3Lと1.5Lはエンジンが異なりますが、1.3L車の方が起こりやすい症状です。
息つきの解消費用
全数交換か部分交換によって変わります。
1.3L車の場合、1本あたり約8000円の部品が8本使用されています。
全数交換すると高額になります。
リヤハブベアリングの異音
リヤハブベアリングの異音も比較的発生することがあります。
異音の症状
速度が上がれば上がるほどに車体リヤに低音の音が出ます。
何かを引きずっているような不快な低音が発生します。
異音の原因
リヤタイヤを支えている、リヤハブベアリングという軸受から発生します。
異音の解消方法と費用
リヤハブベアリングの交換で直ります。
作業は比較的簡単なので1万円もかかりません。
発生する車両
- FF車でリヤブレーキがドラムブレーキの車両
4WD車とリヤブレーキがディスクブレーキの車両では、ハブベアリングが別物なので発生しにくいです。
車体リヤの雨漏り
車体後部に雨漏りが発生することがあります。
雨漏りの発生原因
トランクの付け根部分のフレームが割れてしまうことによって発生することがあります。
ルーフモールの下部分や、トランク付け根部分のフレームが破損すると雨漏れが発生します。
トランクのスペアタイヤスペースやリヤ席足元付近が濡れてしまいます。
雨漏れの解消方法
ルーフモールを取り外して、その下のヒビ部分やトランク付け根のヒビ部分をシール剤で塞ぐことで解消可能です。
雨漏れの解消費用
殆どが診断料金です。
雨漏れの発見が遅れて、臭いがついてしまった場合、臭いを完全に消すことはできません。
雨漏れの発生する車両
- GD系フィット全車
ハードに走行していなくても発生します。
通常の買い物だけで使っていても発生する人は発生します。
ドアミラーベースの塗装剥がれ
特に初期型のフィットで、ドアミラーの根本の部分の塗装が剥がれてしまうことがあります。
塗装剥がれの解消方法
故障という訳では無いので、放置でも大丈夫です。
気になる場合は交換が必要になります。
塗装剥がれの発生車両
- 前期型の特に赤系車両
既に交換済みの車両も多いですが、購入時には要チェックです。
デコボコになっていたりすると、いずれ剥がれます。
リヤショックアブソーバーの油漏れ
リヤショックアブソーバーより油漏れが発生することがあります。
油漏れの原因
ショックアブソーバーは、バネの振動を抑える部品です。
内部にオイルとガスが封入されているのですが、劣化により外に漏れてしまいます。
油漏れの解消方法
リヤショックアブソーバの交換が必要です。
フィットは非常に簡単に交換することができます。
油漏れの発生車両
- 全年式のFF車
フロントショックの油漏れは見たことがありません。
リヤは割と発生します。
購入時はリヤ足回りをチェックしてみてください。
2代目フィットは目立った弱点なし!
GE系フィットのオススメポイント
GD系初代フィットから正常進化を遂げたのがGE系2代目フィットです。
GD系で指摘された不具合ポイントを改善された正常進化を遂げています。
GE系フィットの良い点
- フロントシートのホールド性
- トルコン式CVT
- 電子式スロットル
- ヘッドライトの照射能力
- 収納能力
- エンジンの熟成
- リヤ席ヘッドレストの変更
大まかにはこれらが改善されました。
執筆者のミズコも整備士であり2024年11月時点で2代目フィットハイブリッドRSに乗っています。
フロントシートのホールド性
2代目フィットはフロントシートの形状が改善されました。
脇腹付近が張り出した形状で体が左右に振られるのを防ぎます。
長距離運転や、ちょっとした峠道での疲労感の少ないシートです。
トルコン式CVT
初代フィットは『スタートクラッチ式CVT』に対して2代目フィットは『トルコン式CVT』に変更されました。
トルコンとはトルクコンバーターの略です。
スタートクラッチでは、複数の板を実施に摩擦させて動力を伝えます。
トルコンの動作のイメージは『向かい合わせの扇風機』です。
羽から羽にオイルを送って動力を伝えます。
昔ながらの多段式ATにも使われる伝統の動力伝達方式です。
トルコンに変更になったことにより、初代CVTよりも圧倒的にスムーズな動作になりました。
ドライブ・バイ・ワイヤのスロットル
アクセルの開き方が変わりました。
初代フィットは、『ワイヤー式スロット』です。
ワイヤー式スロットルでは、アクセルペダルとエンジンのスロットルバルブが実際にワイヤーで繋がっています。
2代目フィットは『DBW式スロットル』です。
DBWとは、ドライブ・バイ・ワイヤの事で、アクセルペダルとエンジンはアクセルワイヤーでは繋がってはいません。
アクセルの踏み込み具合で、スロットルバルブに装着されたモーターによりアクセルを開閉します。
DBWのメリット
- クルーズコントロールができる
- トラクションコントロールができる
- 物理ワイヤーが無いので、ワイヤー取り回しによるアクセルペダルの重さの低減
- スムーズなアクセル操作になる
これらのメリットがあります。
ざっくり言うと、『アクセルがスムーズ』です。
ヘッドライトの照射能力
ヘッドライトの性能が優れています。
初代、2代目のフィットのヘッドライトの照射能力は高いです。
特徴的なデザインのヘッドライトは、夜間走行の見やすさも抜群です。
収納能力
2代目フィットは、初代フィットよりもさらに使い勝手が良くなっています。
運転席・助手席合わせて6つのドリンクホルダーがあります。
ペットボトル、コンビニ等のドリンク、水筒等が容易に収納できます。
特に、エアコン吹出口前のドリンクホルダーはエアコンの風を当てることができるので便利です。
エンジンの熟成
初代フィットと2代目フィットのエンジン型式は同じです。
同じエンジン型式ですが、制御の熟成具合が変わっています。
エンジン性能の違い
L15Aエンジン | 2代目フィット | 初代フィット |
最高出力/回転数 | 120PS/6600rpm | 110PS/5800rpm |
最大トルク/回転数 | 14.8kgf・m/4800rpm | 14.6kgf・m/4800rpm |
※表はスライド出来ます。
2代目フィットの方が、クランク角センサをより細かい角度で読み取ったり、その他の制御も優れています。
例えば補機ベルトは初代が手動テンショナで、2代目からオートテンショナです。
同一エンジン型式ですが、細部が熟成されています。
同一型式のエンジンで有りながら、よりパワフルで効率よくガソリンを燃やせます。
後方視界の良さ
リヤ席ヘッドレストが変更になりました。
初代フィットはヘッドレストが格納できません。
2代目フィットはヘッドレストが格納式になりました。
リヤ席に人が乗っていない時の後方視界が非常に良くなりました。
2代目フィットの気になる点
フロントガラスへの映り込み
特定の角度の日射の時にフロントガラスにダッシュボードの映り込みがあります。
映り込みはどの車種でもある程度はあります。
2代目フィットのダッシュボードにはデザインでラインが入っている為、映り込みがやや目立ちます。
右前方視界
初代フィットも同様ですが、右前方が見にくい事があります。
曲がり角では気になりませんが、右曲がりの特定の角度のカーブで右前が見にくいことがあります。
首を移動しないと見えにくい事があります。
まとめ
初代フィットで買うならこんなタイプ
初代フィットよりも2代目フィットがオススメです。
しかし、デザインや価格面で初代を選ぶのならこんなタイプがオススメです。
GD系を買うなら
- 可能ならMT車
- リヤブレーキがディスクブレーキ
- 排気量は1.5L
- 純正オーディオ・純正ナビがついていない
- 可能な限り後期型(DBAーGD○)
こんなタイプがオススメです。
純正ナビ・純正オーディオはパネルの形がフィット専用になっています。
そのために、後から新しいものに交換出来ません。
ナビ装着を視野に入れている場合、メーカーオプションのオーディオ装着車は不向きです。
初代フィット・2代目フィットの型式
フィットは型式で、排気量と駆動方式が分かります。
以下のように型式が分かれています。
初代フィットの型式
排気量・駆動輪 | FF(前輪駆動) | 4WD(四輪駆動) |
1.3L | GD1 | GD2 |
1.5L | GD3 | GD4 |
※表はスライド出来ます。
2代目フィットの型式
排気量・駆動輪 | FF(前輪駆動) | 4WD(四輪駆動) |
1.3L | GE6 | GE7 |
1.5L | GE8 | GE9 |
※表はスライド出来ます。
購入時は型式も確認するようにしましょう。
初代フィット・2代目フィットの型式毎の年式
初代フィットがGD系です。
2代目フィットがGE系です。
しかし、型式はもっと細かく分かれています。
年式毎の型式の変化をまとめます。
GD系の年式と型式
年式 | 型式 |
2001年6月〜 | LAーGD○ |
2003年4月〜 | UAーGD○ |
2004年1月〜 | CBAーGD○ |
2005年12月〜 | DBAーGD○ |
DBAーGD○が最終型です。
2007年9月頃が最後です。
初代を狙うならDBAーGD○がオススメです。
GE系は全てDBAーGE○という型式です。
2代目フィットがオススメ
総じて、2代目フィットがオススメです。
初代・2代目と両方乗りましたが、どちらも良い車です。
2代目フィットの方が年式が新しい面も有り、技術的な部分は進化しています。
2代目フィット以降は走行性能部分は大幅に改善する余地が少ないです。
3代目フィット以降は運転支援(ホンダセンシング)が登場しています。
2代目フィットには運転支援はありません。
TCSやVSA、ABS等の、安全技術は装着されています。
運転支援で周辺の車両を認識して、自動ブレーキをかけたり、追従走行したりは出来ません。
運転支援に強い必要性を感じていない方には2代目フィットはコスパが非常に良くておすすめです。